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中上健次の生原稿寄贈 小説「修験」、顕彰委員会に

寄贈された中上健次の小説「修験」の生原稿(和歌山県新宮市で)
寄贈された中上健次の小説「修験」の生原稿(和歌山県新宮市で)
中上健次(中上健次顕彰委員会蔵)
中上健次(中上健次顕彰委員会蔵)
 熊野を舞台に数多くの作品を残した和歌山県新宮市出身の芥川賞作家、中上健次(1946~92)の小説「修験」の生原稿が6日、新宮市立図書館内にある中上健次顕彰委員会に寄贈された。

 寄贈者は、元河出書房新社社員で、退社後、文芸評論家として活躍した川西政明さん(1941~2016)の娘、長谷川阿貴さん=東京都。川西さんが原稿を入手した経緯などは分からないという。

 生原稿は、400字詰め原稿用紙20枚。最初は万年筆で書いているが、6枚目からインクが切れたのか、ボールペンで書いている。中上は、集計用紙に極細の万年筆で作品を書くことで知られており、原稿用紙は珍しいという。

 「修験」は、妻子と別居することになった男が、ふるさと熊野に帰省し、山中を徘徊(はいかい)する中、幻覚を見て、自分自身を見つめ直すという短編小説。雑誌「文芸」(1974年9月号)が初出で、短編小説集「化粧」(1978年3月、講談社)の冒頭に収録されている。

 6日、新宮市下本町2丁目にある市文化複合施設で記者発表した中上の妻で小説家の中上かすみさんは「生原稿が出てきたことに驚いている。あの当時は原稿が戻ってきたり、こなかったりした。(原稿を)大切にとっておいていただいたことは本当にありがたい」と感謝した。

 委員会は、寄贈された生原稿のコピーを市立図書館内にある「中上健次コーナー」で展示する予定。

 中上健次は1976年に「岬」で芥川賞を受賞し、現代文学の旗手として活躍。熊野地方を題材とした多くの作品を残した。
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