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土砂崩れても河川の遮断ない 奇絶峡の地滑りで想定被害解析

土砂災害現場の対岸で進められる仮設道路の工事(和歌山県田辺市上秋津で)
土砂災害現場の対岸で進められる仮設道路の工事(和歌山県田辺市上秋津で)
 和歌山県田辺市上秋津の奇絶峡近くで起きている地滑りについて、林野庁近畿中国森林管理局は21日、上秋津農村環境改善センターであった第2回技術検討会で解析結果を発表。さらなる地滑りが起きて右会津川に土砂が崩れ落ちても「土砂ダム」ができて河川を遮断することはなく、下流に氾濫などの影響も出ないと明らかにした。

 昨年10月に開いた第1回の検討会で、田辺市の担当者から「土砂ダムができないか心配だ」として、シミュレーション解析の要望があったのに答えた。

 管理局は、100年に1度といわれる豪雨を想定。それを基に現地の地形などを織り込んで解析した結果、土砂は右会津川の右岸側から滑り落ち、河床の延長360メートルにわたって堆積すると想定された。しかし、急傾斜地にあるので、土砂は平面的に堆積せず、傾斜を作って堆積。流れを遮断することなく水は左岸側に流路を変えて流れる、としている。

 さらに、水位は一時的に上昇するが、堆積した土砂の脇を流れるため、周辺で氾濫は起きない。下流域でも影響はないとしている。

■まずは地下水排除

 検討会では、いま進めている対策も明らかにした。

 具体的には、対策を講じているエリアを形態別に(1)地滑り活動エリア(2)地滑り性崩壊・土石流エリア(3)落石・崩壊エリアに分け、(1)と(2)のエリアでは地下水を排除して地滑りを抑えることに重点を置く。(3)のエリアに関しては、斜面にアンカーを打ったり、落石防護の補強をしたりする。

 さらに、崩壊に備えて地盤傾斜計を新たに加えるなど監視体制も強化するという。

 この検討会には、対策工事をより効果的で効率的にできるよう、山地災害に詳しい専門家3人を委員として招いている。その一人である京都大学防災研究所の松浦純生教授は「いろいろな地滑りを調べてきたが、中でも上秋津はやっかいな地滑り。基本通りのやり方では難しい」との見解を示した。その上で「現時点では、地下水を排除することによって地滑りを安定させるしかない。地域住民が安心できるよう、引き続き努力してもらいたい」と語った。

 今回の検討会には林野庁や県、田辺市の職員、地盤・地質調査会社の社員ら約60人が参加。地元住民にも公開した。次回の検討会は3月17日に開く予定。



 現場は県道田辺龍神線沿いの斜面で、昨年7月に大規模な土砂崩れがあった。県道をふさいだ岩や土砂は撤去されたが、崩れた斜面の上方で広範囲にわたって地滑りが起きており、斜面が再度崩れ落ちる可能性があることから、全面通行止めが続いている。

 この県道は、市街地と秋津川方面を結ぶ生活道路で、住民への影響も大きいことから、県は近くに仮設道路を建設中。本年度末までに通行できるよう完成を急いでいる。

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