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瀞峡ジェット船休止 運営会社「航路整備の労力過大」

北山川に停泊する瀞峡ウオータージェット船。コロナ禍で運休のまま事業を休止することが決まった(1日、和歌山県新宮市熊野川町で)
北山川に停泊する瀞峡ウオータージェット船。コロナ禍で運休のまま事業を休止することが決まった(1日、和歌山県新宮市熊野川町で)
 国の特別名勝・天然記念物「瀞(どろ)峡(瀞八丁)」を航行する「瀞峡ウオータージェット船」の運営会社「熊野観光開発」(和歌山県新宮市熊野川町日足、奥村夏男社長)は1日、現在運休しているジェット船の事業を休止すると発表した。航路維持のための整備にかかる労力が過大であることや新型コロナウイルスによる乗船客の減少などが理由。「期限は定めていない」(同社)としており、半世紀の歴史を持つ瀞峡ウオータージェット船が曲がり角を迎えている。

 同社によると、瀞峡ウオータージェット船は、取り入れた水を後方に勢いよく噴出することで推進する仕組みで、水深80センチ程度あれば走ることができる。同社の前身である熊野交通が、船尾につけたプロペラを回転させることで進む「プロペラ船」に続き、昭和40年代から運航してきた。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、同社は4月13日からジェット船を運休。その後、運航再開を模索したが、夏の大雨で航路が悪化し、そのまま運休が続いている。

 休業の背景について同社は、紀伊半島大水害(2011年)以降、ジェット船が航行する熊野川と支流・北山川に流れ込む土砂が年々増加。自社で重機を使って航路整備に取り組んでいるが「掘っても掘っても次の雨でまた埋まってしまうことの繰り返し」(奥村社長)といい、航路維持のための労力や費用が過大になっていたと説明。

 作業や運営方法を見直すなどして事業の存続について検討したが、作業員の高齢化や人手不足に加え、コロナ禍の影響で乗船客が減っているとして、運休したまま来年1月1日をもって事業を休止することを決めたという。

 奥村社長は「長い間ご愛顧いただき、ありがとうございました。熊野地域の重要な観光コンテンツだと理解しており、会社としてもつらい決断。廃止ではなく休止としており、航路整備に行政の力をお借りしたり、別の事業者に事業を譲渡したりするなど、何らかの形で再開できるよう模索したい」と話す。

 ジェット船事業の休止は地域の観光にとっても痛手だ。新宮市の田岡実千年市長は「新宮にとって非常に大きな観光資源なので、事業休止は大変残念。一日も早い再開を期待している」と述べた。

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