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旧駅舎の木材でベンチ JR田辺駅前に設置

旧駅舎で使われていた部材を再利用したベンチ。市街地活性化施設「タナベエンプラス」に設置されている(和歌山県田辺市湊で)
旧駅舎で使われていた部材を再利用したベンチ。市街地活性化施設「タナベエンプラス」に設置されている(和歌山県田辺市湊で)
JR紀伊田辺駅の旧駅舎(2017年8月撮影)
JR紀伊田辺駅の旧駅舎(2017年8月撮影)
 JR紀伊田辺駅(和歌山県田辺市湊)の旧駅舎で使われていた木材がベンチに生まれ変わり、駅前にある市街地活性化施設「タナベエンプラス」に設置された。地域の思い出が詰まった旧駅舎の記憶を受け継ごうと、解体時に保存していた部材を再利用した。施設を運営する南紀みらいの担当者は「新たなまちの景色の一つになれば」と話している。

 旧駅舎は1932年建築の木造2階建て。赤い屋根が特徴的な風情ある外観だったが、老朽化による建て替えで2018年に解体された。

 タナベエンプラスは、国のモデル地区指定を受けた「景観まちづくり刷新事業」の一つとして田辺市が建設し、20年8月にオープン。地場産品のPR・販売コーナーやコワーキングスペース(共有オフィス)などを設け、南紀みらいが指定管理者となっている。

 オープン前から市民も巻き込んで行われた基本構想づくりの段階で、旧駅舎を含めたまちの記憶を継承していこうというアイデアが生まれた。そこでJR西日本に依頼し、解体部材を譲ってもらっていたという。

 ベンチの作製に協力したのは、同市新庄町の製材業「山長商店」。企画部長の迫平隆志さん(42)は木育イベントの実行委員を務め、商店街での勉強会にも積極的に参加するなど、地域の人たちとまちづくりへの思いを共有していた。「木を生かしてもっとまちに関われたらという思いがあった」と話す。

 再利用したのは旧駅舎の梁(はり)に使われていた部材。堆積していたほこりや汚れを洗い流し、くぎを取り除いたり、サンドペーパーやカンナで削ったりして表面をきれいに仕上げた。

 5脚あり、長さ176~320センチ。施設前に設置しており、誰でも自由に座ることができる。

 駅舎内で使われていた木製の扉も、倉庫のドアとして活用している。

 南紀みらいの尾崎弘和さん(53)は「タナベエンプラスの理念は、人がつながり、縁が広がる空間。買い物に来た子どもやお年寄りたちにこのベンチに座ってもらうことで、駅前ならではの新たなまちの景色が生まれると思う」と話している。

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