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紀州材で「紙糸」開発へ 田辺市の帽子職人がプロジェクト

製紙用チップと紙糸のサンプルを手にする岡本一志さん(和歌山県田辺市紺屋町で)
製紙用チップと紙糸のサンプルを手にする岡本一志さん(和歌山県田辺市紺屋町で)
 帽子職人で、帽子素材の販売・開発会社「motomoto(モトモト)」(和歌山県田辺市紺屋町)代表の岡本一志さんが、紀州材を使った「紙糸」開発プロジェクトを立ち上げた。「間伐材や端材から上質な紙糸を作れば森林活用につながる。さらに帽子やかばん、服などに製品化して世界展開すれば、新たな産業も生まれる」。細い糸から大きな夢を編もうとしている。


 岡本さんは「帽子職人にとって、技術と同じくらい重要なのが素材」と強調する。麦わらやヤシ、麻などの天然素材は、海外からの輸入が大半。世界全体でも不足し、天然原料の価値は高まっているという。

 そこで注目されているのが紙糸。数年前、フランスの展示会に参加した際、衣服、雑貨、帽子などおしゃれなアイテムが並ぶ中、日本の素材が多く使われていた。会場でも「日本の紙糸はきれいで、発色も良い」と好評で「新しいものがあればぜひ提案してほしい」と打診もあった。

 ところが、日本で製造される紙の原料は、約70%が輸入。しかも紙糸の販売を手掛けているのは外国の企業だった。「なぜ、日本でできないのか」。疑問を持ったことがプロジェクトの出発点だった。

 2019年に愛知県から紀南へ移住。山林の荒廃を目の当たりにした。県内に多いスギやヒノキなどの針葉樹は、広葉樹に比べ繊維が長く、より強度のある紙糸が作れる。「上質の紙糸が作れれば、木材の有効活用、森林保全につながる」と考えた。

 紙糸は太さも色調も自由に変えられ、原料の組み合わせ次第で、さまざまな使い方ができる。紙は帽子だけでなく、服やかばん、意外なところでは石こうボードや畳などの建材にも使用されている。プラスチックやビニールを紙に置き換えていく流れも期待できるという。

 岡本さんは「流通ルートさえ築ければ、海外展開もできる。消費する場所が増えれば、地元に新たな産業ができる可能性がある」と期待する。

 来年4月ごろに製紙用チップの購入を始め、23年春以降の製品化を目指す。

■CFで資金募る

 岡本さんは開発資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。2千円を超える寄付額は税金の控除を受けることができる「ふるさと納税型」。CFはモーションギャラリーを使用している。返礼品は5千円で紙糸サンプル、1万円でミニハットなど。募集は11月30日まで。

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