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新作能「清姫淵」を初披露 ゆかりの田辺市で特別公演

観客を魅了した新作能「清姫淵」(10日、和歌山県田辺市文里2丁目で)
観客を魅了した新作能「清姫淵」(10日、和歌山県田辺市文里2丁目で)
 「田辺能特別公演」(田辺青耀会主催、紀伊民報など後援)が10日、和歌山県田辺市文里2丁目のハナヨアリーナであり、観世流新作能「清姫淵(きよひめぶち)」が初披露された。伝統芸能の振興に取り組む能楽師小鼓方の上田敦史さん=兵庫県丹波市=が、文化庁の支援事業を受けて催した能。安珍と清姫が法華経によって救われ、神仏として昇天する道成寺縁起の最後の場面を題材にしており、観客は新たな能の世界に浸った。


 上田さんは青耀会代表の能楽師太鼓方、上田悟さん=大阪府和泉市=の次男で、能楽を主とした文化芸術や伝統芸能の振興に取り組む会社「伝楽舎」(丹波市)の代表を務めている。上田さん親子は10月、清姫生誕の地とされる田辺市中辺路町を訪れ「清姫の墓所」参りをしたり、地元の人に話を聞いたりもした。

 新たな能を作ったことについて、敦史さんは公演あいさつで「道成寺について書かれた記事で『清姫さんの描かれ方がかわいそう』という声が載っているのを、父が見たのがきっかけだった」と説明。

 「いろいろと調べると、最後は、救いの道へつながっていくことを知った。『道成寺』という曲では物語の一番暗い部分を扱っているが、明るい曲が同時に存在してもよいのではないか、そのことで互いの曲にさらなる魅力が加わると考え、安珍清姫が神仏として昇天するところを書いた。『清姫淵』を地域の皆さんに、大切な宝としていただけるとありがたい」と語った。

 敦史さんが小鼓、悟さんが太鼓で出演。観客は謡やはやし、舞の表現に魅了され、終了後は拍手を送った。鑑賞した同市東山1丁目の女性は「直接見て、能の世界に浸ることができて幸せ。清姫淵は、今までとは違った意味で受け取れたので良かった」と堪能した様子だった。

 この日は「清姫淵」のほか、昨年も同市内で披露された敦史さん作の観世流新作能「尼比恵(あまびえ)」の上演もあった。公演の合間には、敦史さんが大鼓と小鼓の違いについて説明したり、鼓の打ち方を教えたりもし、観客は伝統芸能を楽しんでいた。

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