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植林地を蜜源の森に 若手農家が広葉樹植樹

林間に広葉樹の苗木を植える梅郷クラブのメンバー(和歌山県みなべ町市井川で)
林間に広葉樹の苗木を植える梅郷クラブのメンバー(和歌山県みなべ町市井川で)
 植林地を生物が多様な森に戻そうと、和歌山県みなべ町の若手農業者でつくる「梅郷クラブ」は14日、同町市井川の町有林で広葉樹の苗木を植えた。これまでの植樹場所は耕作放棄地だったが、植林地では初めて。世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」の理念でもある、自然と共存する持続可能な農業を目指す活動の一つで「広く知ってもらい、全国のモデルになればと思う」と期待している。

 クラブのメンバーは14人で全員が梅農家。地域農業の発展のためにさまざまな活動をしており、その一つがニホンミツバチを保護するための広葉樹の植樹と巣箱の設置。梅の主力品種「南高梅」が自家受粉できないことから、ミツバチなどの昆虫に助けてもらう必要があり、多様な生物がすめる森に戻そうと、紀州備長炭の原木でもあるウバメガシなどさまざまな広葉樹の苗木を植えている。

 これまで植えてきた場所は、農家の高齢化や後継者不足から増加している耕作放棄地だった。

 今回、植樹した植林地は、三里峰の巨岩群「こもり岩」近くの町有林。町が2年間かけ、建築材として販売するため50~60年生のスギやヒノキを20ヘクタールにわたって間伐してきた。

 この日は梅郷クラブのメンバー8人に加えて、ニホンミツバチの保護活動に取り組む住民団体「ビーフォレスト・クラブみなべ百年の森」のメンバー7人も参加した。

 参加者は、ビーフォレストのメンバーでみなべ川森林組合参事の松本貢さん(60)の案内で植林地に入り、間伐した後の林間に苗木を植えていった。

 植えたのはネズミモチやリョウブ、ヒメシャラなど5種計180本。いずれも花が少ない夏季に開花する種類で、ミツバチが蜜を採取するのに良い環境となることが期待される。

 松本さんによると、植林地に残っているスギやヒノキは10~20年後に全て伐採するため、20ヘクタールにわたって広葉樹の森に戻ることになる。「本来なら皆伐すれば、新たに植樹しなければならないので、山主や管理者にとっても今回の活動はありがたい。農業は山ともつながりが深いということを思ってもらえ、世界農業遺産の活動が広がりつつある」と今回の活動を歓迎する。

 梅郷クラブでニホンミツバチ保全のプロジェクトリーダーを務める中井貴章さん(31)=みなべ町筋=は「みなべ町でも植林と天然林の割合は半々。それはニホンミツバチにとって厳しい環境。根本的に解決するために蜜源となる樹木を植える必要がある。多くの人に知ってもらいたい」と話している。

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