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列車内が特別な空間 トレイナート号が運行

車内が植物で装飾された「紀の国トレイナート号」で、アート巡りを楽しむ乗客ら(19日、和歌山県田辺市内で)
車内が植物で装飾された「紀の国トレイナート号」で、アート巡りを楽しむ乗客ら(19日、和歌山県田辺市内で)
 和歌山県内を通るJR紀勢線をアートで彩る「紀の国トレイナート2019」(実行委員会主催)のイベントの一つ、臨時列車「紀の国トレイナート号」の運行が19日、始まった。車内に飾り付けられた植物を眺めたり、沿線のアート作品を鑑賞したりと、乗客がいつもと違う特別な空間を楽しんでいる。20日は紀伊田辺駅―新宮駅間で運行する予定。

 今年で6回目を迎える芸術イベント。今回は「車窓アート」として、沿線12地域に設置したアート作品を車窓から鑑賞することができる。

 19日は午前9時前に田辺駅を出発し、御坊駅で折り返してから串本方面に向かった。

 アート作品の設置場所では、電車が徐行運転。車内には「どうぞ、紀伊半島の雄大な風景の中にアートをお楽しみください」とのアナウンスが流れた。

 乗客は作品の解説を聞きながら、窓に顔を近づけたり、カメラのシャッターを切ったりしていた。時折雨が強く降り、視界がにじむ場面もあったが、作品とともに作家らが手を振る姿が見えると、自然と拍手が起こった。

 車内では地元名産のまんじゅうなどの販売があり、田辺駅構内ではジャズバンドの演奏もあった。

 20日は田辺駅を午前9時5分に出発する予定。

■心模様映す電車旅

 普段、移動に使うのはほとんどが車。だからだろうか、「電車」と聞くだけで、旅に誘われるような、少し心が浮き立つような気持ちになる。

 トレイナート号はさらに、「アート」がふんだんに盛り込まれた空間。どんな世界が待っているのか、期待しながら乗り込んだ。

 車両に一歩足を踏み入れると、さまざまな植物があふれている。ミカンの木やサボテンもあり、麦のわらでできた装飾品「ヒンメリ」も揺れている。

 楽しみにしていた車窓アートは、雨ではっきりと見られなかった所もあったけれど、窓の向こうから手を振る作家たちの姿に、温かい気持ちになった。

 ガタンゴトンと揺られながら作品を目にしていると、ふと、電車通学をしていた大学時代の光景を思い出した。行き帰りに読んでいた小説、ビルの谷間からのぞいた真っ赤な夕日―。もう何年も思い出すことのなかった記憶が、断片的に頭に浮かんでは消える。

 電車は単なる移動手段ではなく、時には乗客の心模様を映し出す乗り物なのかもしれない。アートとの相乗効果で、さらに心が動かされる。そんなことを感じた。 

(橋爪明日香)

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