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世界遺産の景観守りたい 米作りに参加できるプロジェクト始める、和歌山・田辺市本宮町

大鳥居周辺に広がる田んぼの保全プロジェクトを始めた金哲弘さん(和歌山県田辺市本宮町で)
大鳥居周辺に広がる田んぼの保全プロジェクトを始めた金哲弘さん(和歌山県田辺市本宮町で)
 熊野古道を歩く人たちの目的地の一つである和歌山県田辺市本宮町、世界遺産・熊野本宮大社の旧社地大斎原(おおゆのはら)。そこにそびえる大鳥居周辺に広がる田んぼの景観を守りたいと、米作りに携わっている地域住民が、個人や企業に参加を募るプロジェクトを始めた。近年は絶景スポットとしても注目されているが、耕作者の高齢化に伴って維持が課題に。住民は「末永く守っていくための仕組みを作りたい」と協力を呼びかけている。


 「『大斎原の景観を守る』プロジェクト」を始めたのは、本宮町伏拝に住む金哲弘さん(43)。大阪市出身の金さんは、大阪の中学校で国語の教師を務めていたが、熊野古道や田舎暮らしに憧れた妻と子どもが先に本宮町に移住し、自分も移り住んだ。その後、北山村や新宮市の中学校で教師として7年間働き、昨年3月末に退職。「山里舎(やまざとしゃ)」という屋号で、企業や団体などを対象に研修をする「体験学習ファシリテーター」などとして活動している。

 このプロジェクトを始めたきっかけは、昨年度に参加した「たなべ未来創造塾」だった。

 金さんは本宮町に移り住んだ時から、大斎原そばに広がる約3万5千平方メートルの田んぼで米作りをしている人たちでつくる「前地水利組合」に入って稲作を続けているが、高齢化によって作業が難しくなる人が年々増加。それに伴って当初は約500平方メートルだった金さんの田んぼも今では約3千平方メートルに増えており、友人を誘って4家族で協力し合い、無農薬・無肥料で栽培。「高齢化がさらに進めばここで米を作る人がいなくなってしまう」との危機感から、未来創造塾でこのビジネスプランを考えた。

■個人や企業を募集


 金さんは田んぼを保全する活動を本年度からスタート。具体的には田植えや稲刈りなど年間を通して作業に参加でき、収穫後に1キロの米がもらえる「個人参加」(大人2千円、子ども千円)のプランと、空いた耕作地を借りて米作りを体験する「企業の田んぼ」(一口2万円で約100平方メートル)というプランを用意した。個人参加は今年の春の田植えから始めており、草取りや稲刈りまで延べ約30人が参加した。

 さらに、作業に参加はできないが、この取り組みを応援したいというサポーター(一口5千円)も募集。収穫後に1キロの米を送る。

 金さんは「田植えシーズンには水鏡となって大鳥居が映り込み、季節が進むと緑のじゅうたんになったり、稲穂が風になびいたりする景色は素晴らしいが、米を作らなくなったらすぐに荒れてしまう。この景色を守りたいという方に賛同していただけたらうれしい」。水利組合の中村全文組合長(71)も「この田んぼは絶対に荒らすわけにはいかない場所なので、このプロジェクトを頼りにして期待もしている」と話している。

 問い合わせは金さん(090・9691・9548)へ。

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