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地域農業の維持へ 田辺市上秋津の農家らが会社設立

梅やミカン畑が広がる上秋津地区。耕作放棄地対策へ農家らが動きだした
梅やミカン畑が広がる上秋津地区。耕作放棄地対策へ農家らが動きだした
 農家の高齢化と後継者不足により耕作放棄地が増える中、田辺市上秋津で農家らが田畑を復活させたり、農作業を引き受けたりする農業法人を立ち上げた。作業軽減化の手助けもするなどして、地域農業の振興を目指す。


 名称は株式会社「秋津野ゆい」。地元の農家だけでなく、市内の梅加工業者ら事業者、個人が出資し、資本金1500万円で設立した。事務所は地元の体験型施設「秋津野ガルテン」に置いており、社長は、ガルテンを運営する農業法人「秋津野」の玉井常貴会長(75)が務める。

 農家の高齢化や後継者不足で増え続ける耕作放棄地の周辺では、イノシシやシカなどの鳥獣害が増え、害虫も発生しやすい。地域では主力の梅を中心に農作物の生産量が減っていることも問題になっている。

 新会社では上秋津や周辺の農家から農地を借り受けて、作物の栽培を続ける。農家が農業を継続していても、収穫などで人手が足りない場合、作業を請け負う。

 作業の軽減化では、自走草刈り機、梅の枝などの樹木粉砕機など農機具のレンタルをする。ICT(情報通信技術)関連事業者と連携してのスマート農業の調査研究や実践にも取り掛かる。

 このほか、ガルテンと連携し、都市と農村との交流を促すグリーンツーリズム事業を展開する。

 玉井社長は「農業が衰退すると地域の活力は低下する。将来を見据えて対策に取り掛かることにした。雇用拡大にもつなげていければと思う」と話している。

 上秋津では、地元住民の出資で1999年に農産物直売所「きてら」を開設し、2006年に秋津野を設立。08年に旧小学校を活用した秋津野ガルテンを開業した。農業体験や飲食、宿泊ができる施設で、昨年にはICT関連事業者を誘致するための施設も開設し、農業を核とした地域づくりを展開している。

 農林水産省が国内の農林業の実態をまとめた「農林業センサス」によると、田辺市内の15年の農家数(専業と兼業)は2112戸で、10年前と比べると449戸減少した。高齢化率は10年間で6ポイント上昇して53%。耕作放棄地は100ヘクタール増えて290ヘクタールになっている。

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