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廃校舎を現場工事の事務所に 高速「すさみ串本」、和歌山

教室の面影が残る現場事務所(和歌山県串本町和深で)
教室の面影が残る現場事務所(和歌山県串本町和深で)
現場事務所などに活用されている旧和深中学校の校舎。裏ではすさみ串本道路の工事が進められている(和歌山県串本町和深で)
現場事務所などに活用されている旧和深中学校の校舎。裏ではすさみ串本道路の工事が進められている(和歌山県串本町和深で)
 来年春に開通予定の「すさみ串本道路」(和歌山県すさみ町江住―串本町サンゴ台、19・2キロ)の工事が進められている。国土交通省紀南河川国道事務所(田辺市)によると、串本町やすさみ町では63件の工事が同時に行われ、多くの業者が携わっている。そのため、現場事務所の確保が難しいという声もある中、廃校舎を活用する動きが出ている。


 同事務所によると、すさみ串本道路では46社が工事に従事している。一方で、賃貸物件の少ないことや国道42号以外の道路が狭く工事関係車両が出入りしにくいことなどから、現場事務所の確保が難しいという。

 そこで、同事務所は串本町から情報提供を受け、少子化で廃校となった同町和深の旧和深中学校に注目。業者とのマッチング(つなぎ合わせ)を図った。

 同中学校は3階建ての鉄筋コンクリート造りで、1981年に完成した。生徒数が減少し2006年に廃校。同町有田の串本西中学校と統合した。

 校舎には、和深地区周辺で工事をする3社が入っている。それぞれフロアごとにある教室や図書室、視聴覚室、美術室、保健室などを使っている。協力業者に部屋を提供している所もある。

 昨年12月、学校近くにある「和深川橋」の上部工事を手がける「錢高組大阪支社」(大阪市西区)が初めて校舎を利用し始めた。現在、2階にある1年教室に現場事務所、その隣の2年教室を作業員の休憩室にしている。本が残る図書室は、安全教育や大人数の打ち合わせに使っている。黒板は当時のまま残し、メモなどに活用。机や棚、ロッカーなどを新たに設置した。

 工事の作業所長を務める
宮澤祐蔵さん(50)によると、新たに現場事務所を建設すると、工事が終わると解体も必要になり費用がかさむが、校舎を借りることで費用を抑えられる。

 すでに電気が使えて水道もすぐそばまで来ていることから、事務所の準備期間の短縮にもつながった。グラウンドに社員や作業員の通勤車両を置けることもメリットになっている。

 宮澤さんは「それぞれの教室は事務所にするにはちょうど良い大きさ。3社の打ち合わせもすぐできる。何より、現場が近いのが助かっている」と話した。

 また、他の工事業者の担当者は「旧和深中学校に事務所を置いていることを地域の人に伝えると、距離感が近くなった。ここを卒業された方が多く、『夜遅くまで明かりがついている』とかよく見てくれている」と語る。現在、工事業者同士が協力して校舎にこいのぼりを掲げており、地域住民に人気を集めている。

 このほか、すさみ串本道路の関連では、廃園になったすさみ町江住の江住保育所を活用し、現場事務所にしている工事業者もいる。



 すさみ串本道路は現在、全16本あるトンネルの13本が貫通した。そのうち、「覆工コンクリート(内壁)」まで完成したのは9本。掘削中のトンネルは3本ある。全19ある橋は全て工事中という。事業進捗(しんちょく)率は3月末時点で約68%。

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