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焼き打ちの跡くっきり 根来寺遺跡の展示整備進む

報道関係者に公開された半地下式倉庫のレプリカ(和歌山県岩出市根来で)
報道関係者に公開された半地下式倉庫のレプリカ(和歌山県岩出市根来で)
 和歌山県は、岩出市根来の旧県会議事堂移築事業で発見された、根来寺遺跡の半地下式倉庫や遺物の高精細レプリカを製作、屋外展示施設として整備を進めている。北半分が完成したことから4月1日からプレオープンする。入場は無料、開場時間は午前9時~午後5時。全施設のオープンは11月を予定している。

 この遺構は、議事堂の移築に伴った2010年と11年の発掘調査で見つかった。「天正の兵火」とも呼ばれる1585(天正13)年の豊臣(羽柴)秀吉による焼き打ちの痕跡が明確に残り、中世根来寺の生活を伝える貴重な遺構として保存することになった。2018年に施設として整備が決まった。

 半地下式倉庫の実物(長さ約9メートル、幅約5メートル)をそのまま展示するのは困難なため、シリコンで型取りして繊維強化プラスチック(FRP)で精巧に再現、実物を保護するように真上に設置している。施設は約700平方メートルで19年9月に着工、今年3月下旬までに約350平方メートルが完成した。屋根も設置されている。11月までには幅約3メートルの大きな階段遺構のレプリカ(ガラス繊維補強コンクリート製=GRC)も登場する。総事業費は1億1千万円。

 半地下式倉庫は、地面を掘って地下を利用している。中2階があって、その部分は床が深くなっている。油や液体を入れた大甕、みそや漬物を入れたおけ、米や生活道具が入れられていたと考えられている。レプリカは、焼けた赤い床がリアルでたるが置かれていた所は丸い焼け跡になっている。湿気対策の井戸跡なども再現されており、発掘当時の様子を垣間見ることができる。

 このほか、半地下式倉庫前と、隣にある休憩所には、大甕やつぼ、皿、瓦などの代表的な遺物のレプリカ(GRCとFRP)も七つ配置。質感も本物そっくりで、触って楽しめるようになっている。

 解説板は4カ所に設置し、根来寺境内の歴史と子院(しいん)の様子を説明している。各分野の専門家が時代考証を行った復元イラストを多用、音声コードもある。子どもから大人まで楽しめ、外国人や視覚障害者にも配慮したつくりになっている。

 県文化遺産課は「ここは中世根来寺の歴史を学べる公園。発掘した当時の遺跡を肌で感じてほしい」と来場を呼び掛けている。


 根来寺 平安時代の終わり頃、1130年に覚鑁(かくばん)が高野山に創建した。その後現在地に移され、中世に大きな勢力を持ち、戦国時代に最盛期を迎えた。長さ約1・5キロ、幅約800メートルの範囲に300以上の子院がひしめくように立ち、多くの僧侶が生活して研さんに励んでいたという。秀吉の紀州攻めで焼き打ちに遭ったが、江戸初期に紀州徳川家が再興している。1976(昭和51)年から本格的な発掘調査がされた。中世根来寺は史跡根来寺境内、根来寺遺跡として保存され、朝倉氏一乗谷遺跡(福井県)、草戸千軒町遺跡(広島県)と並び日本中世三大遺跡と称されている。

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