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未知の敵に緊張の病棟 新型コロナに対応、現場の声

病院敷地にテントを張りめぐらせた特設の検査空間(和歌山県田辺市新庄町の紀南病院で)
病院敷地にテントを張りめぐらせた特設の検査空間(和歌山県田辺市新庄町の紀南病院で)
新型コロナウイルス患者に対応する医療従事者が装着する防護具
新型コロナウイルス患者に対応する医療従事者が装着する防護具
 和歌山県田辺・西牟婁で唯一の感染症指定医療機関である紀南病院(田辺市新庄町)には、2月中旬~5月初旬に新型コロナウイルスの陽性患者5人が入院していた。感染の有無を調べるPCR検査は100人を超えた。未知のウイルスに医療の現場はどう立ち向かったのか。当事者の声を聞いた。

 患者が入院している部屋に入るには、ナイロン製の防護衣、二重手袋、医療用高機能マスク「N95」、ゴーグルかフェースシールド、帽子と多くの防護具を装着する。

 40代の女性看護師は「準備に時間がかかり、患者さんの元にすぐに行けない。N95マスクは気密性が高く、長時間装着していると、暑くて息苦しい。会話もしづらいと感じた」と話す。

 患者はウイルスが室外に漏れないように気圧を下げた「陰圧室」に入り、陰性が確認されるまで部屋から出られない。長い人で1カ月。隔離された患者が安心して入院生活を送れるよう、不安や必要な物品がないかなどを丁寧に確認し、対処したという。

 「驚いたのは陽性でも症状がない場合があること。軽症で身の回りのことができる人には、病室の固定電話からもコミュニケーションを取った。電話対応時はゆっくりと訴えを聞き、不安の軽減に努めた」と患者に寄り添い続けた。

 感染予防は徹底していたが、それでも「自分が感染し、他の患者や家族にうつしてしまわないかという不安はよぎる。病棟はみんな緊張状態で、精神的にかなり厳しかった」と振り返る。「自宅では普通に生活したが、念のため、高齢の両親との接触は少なくした」

 病院によると、医師や看護師、一般患者への風評被害があった一方で、マスクや寄付金など善意も多く寄せられているという。

■第2波に備え

 紀南病院の感染症病床は4床だったが、県の要請を受け、10床に増やした。阪越信雄院長は「今回は地域内で感染が拡大しなかったが、必ず第2波が来ると想定している。今回の経験を生かさなければならない」と力を込める。

 防護具は4月以降、入荷が困難になった。備蓄の必要性を痛感しているが、入手は全国的な競争になっている。そのため、使い捨てが主流のガウンは、繰り返し使えるタイプの導入も視野に入れる。PCR検査で患者が車に乗車したまま受ける「ドライブスルー方式」の導入や、プレハブの診察室設置も検討中。現場の声を聞きながら備えているという。

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