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「物語のなかの熊楠」 研究者の〝イチオシ〟紹介

南方熊楠が登場する小説、漫画などを展示中の企画展(田辺市中屋敷町で)
南方熊楠が登場する小説、漫画などを展示中の企画展(田辺市中屋敷町で)
 田辺市中屋敷町の南方熊楠顕彰館は8月16日まで、企画展「物語のなかの南方熊楠~小説・マンガ・映画・音楽~」を開いている。熊楠研究者ら十数人が、熊楠が主人公としてはもちろん、個性派脇役としても登場する〝イチオシの物語〟を紹介している。作品は実際に手に取って読むこともできる。前期(7月12日まで)と後期(14日~8月16日)で展示品の入れ替えがある。


 館内の展示と並行し、南方熊楠顕彰会公式フェイスブックでも順次紹介する。新型コロナウイルス感染症の影響により、自宅で過ごす時間が増える中、企画展で取り上げた作品を通じて熊楠の活躍する姿が「おうち」でも楽しめる。

 前期は15作品(小説9、漫画4、句集1、映画1)を展示中。郷間秀夫・栃木県農業大学校教授は、漫画家・水木しげるさんが熊楠の生涯を描き出した長編作品「猫楠 南方熊楠の生涯」(KADOKAWA)を紹介して「波瀾(はらん)万丈だった熊楠の生涯がとても明るく活写されています。熊楠と交流のあった人物群もユーモラスに表現されており、これも見どころ」と薦めている。

 一條宣好・山梨郷土研究会会員は、第31回日本SF大賞受賞作「ペンギン・ハイウェイ」(KADOKAWA)を紹介。著者は森見登美彦さんで、2018年にはアニメ映画化された。小学4年生の主人公「アオヤマくん」はテーマを定めて学習する習慣があり、日々ノートを取る。そのことが説明される部分に熊楠が登場する。

 志村真幸・慶応大学非常勤講師は、辻真先さん著「超人探偵 南方熊楠」(光文社)を紹介。この小説の舞台は現代の田辺・白浜で、主人公である編集者の服部健太郎に熊楠の霊が憑依(ひょうい)し、素晴らしい推理を披露して事件を解決してしまうという。「熊楠は探偵小説と相性がいいようです。ただし、とんでもない設定にされていることも多く、本書も読者の予想をはるかに越えた展開を見せます」と志村さん。

 映画作品では、唐澤太輔・秋田公立美術大学大学院准教授が「映像歳時記 鳥居をくぐり抜けて風」(池田将監督)を薦めている。ニューヨークで生まれ育った12歳の少女エマが、日本人の祖父とともに熊野を中心とした幾つかの神社を旅する映画。エマは、祖父から熊楠のことを聞かされる。「全編を通じて流れている通奏低音は、間違いなく熊楠の視座」と唐澤さん。

 俳人の杉浦圭祐さんは、俳人・宇多喜代子の句集「記憶」を紹介。第27回詩歌文学館賞を受賞した句集で、熊楠をテーマとした30句の連作が掲載されている。

 開館時間は午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。展示期間中の休館日は6月22、29日と7月6、13、20、21、22、27日、8月3、10、11日。

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