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【動画】唯一の皆地笠職人100歳に 田辺市本宮町の芝さん「体動く限り続ける」

 和歌山県田辺市本宮町皆地で平安末期から作られ、熊野詣でなどに使われてきたという「皆地笠(みなちがさ)」の伝統技法唯一の継承者である芝安男さん=本宮町皆地=が25日、100歳の誕生日を迎えた。皆地笠は「熊野古道歩きには欠かせない」と多くの語り部らに愛用されており、芝さんは「体の動く限り、やり続けたい」と話している。

 皆地笠は薄く加工した熊野のヒノキを手作業で編み上げた笠。軽い上、風通しが良くてむれにくく、ヒノキは油を含んでいるので雨も弾く。上皇から貴族、庶民まで身分に関係なく広く愛用されたことから「貴賤笠(きせんぼ)」とも呼ばれていた。今では世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録された熊野古道を、多くの語り部がこの笠をかぶって案内している。

 誕生日の25日、真砂充敏市長の代理として山下義朗本宮行政局長(58)らが芝さん宅を訪れ、お祝い状と記念品を贈った。

 山下局長が「100歳、おめでとうございます」と呼び掛けると、芝さんは「ありがとうございます。皆さんのおかげです」と感謝。「100歳というのは、わし自身も考えていなかった。伝統が消えていくと思うと残念。後継者がないので、一日でもこの手仕事を、できる限りは、100歳以上になっても、1枚ずつでも触っていきたいという信念を持っている。手の動く限り、足の動く限りやり続けたい」と話した。

 芝さんは幼い頃から、職人だった父の手伝いをする中で技法を習得。戦前には8軒ほどの工房があり、分業しながら皆地笠を編み、四国や九州などにも出荷していた。しかし、戦後の急速な経済成長に伴って従事者が減少し、1960年代には芝さんだけになってしまった。

 芝さんは皆地笠のほか、修験者がかぶる「阿闍梨(あじゃり)笠」やヒノキ細工の茶道具なども手掛け、各方面で高く評価されている。1978年に県名匠表彰、85年に黄綬褒章、2016年には市文化賞などを受けた。

 平成に入ってから、後継者育成のために県などの支援で何人かの弟子を取って伝承を試みたが、原材料の調達から製材、製作や販売まで多岐にわたる工程が難しく、伝承には至らなかった。

100歳の誕生日を迎えた皆地笠職人の芝安男さん(25日、和歌山県田辺市本宮町で)
100歳の誕生日を迎えた皆地笠職人の芝安男さん(25日、和歌山県田辺市本宮町で)
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