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2年連続刈り取り断念 串本特産の「姫ひじき」生育不良

生育不良が続いているヒジキ
生育不良が続いているヒジキ
2年連続でヒジキの刈り取りを断念することになった姫地区の磯(和歌山県串本町姫で)
2年連続でヒジキの刈り取りを断念することになった姫地区の磯(和歌山県串本町姫で)
 和歌山県串本町姫の特産品である「姫ひじき」が生育不良で、例年この時季に刈り取りをしている地元の「姫ひじき採捕組合」(寺本ひろ子組合長、15人)は今年の収穫を断念することを決めた。刈り取り断念は2年連続。県水産試験場(串本町串本)は、日本の南岸を流れる黒潮が大きく蛇行する「黒潮大蛇行」という現象に伴う海水温の上昇などが影響しているとみている。


 姫地区の磯で採れるヒジキは丈が長く、太くてこしがあり、炊くと粘りがあってやわらかいのが特徴。遠方からも注文が入る人気商品として知られている。

 寺本組合長(72)=串本町姫=によると、今月上旬に役員らで磯を見回ったところ、通常なら1~1・5メートルほどの長さに成長していなければならないが、今年は短いもので2、3センチ、長いものでも15センチほどしかなかった。このため「生えてはいるが、刈り取りができる状況ではない」として、昨年に続いて今年も断念を決めたという。

 寺本組合長は「2年連続で刈り取りができないというのはつらい。去年の春よりも、ちょっと伸びてきたのではないかという感じもするので、来年に期待したい」と話す。

 収穫されたヒジキを加工している「姫ひじき生産組合」の堀喜代子組合長(84)=串本町姫=も「『今年はどうですか』というお電話をたくさん頂いているが、申し訳ないが、今年も刈り取りできないんですという返事しかできない。来年こそはお客さんにお届けできれば」と話している。

 県水産試験場によると、串本町内の状況を調べたところ、収穫年の2月とその前年の12月の海水温が低いとヒジキの生産量が多くなる傾向があることが分かってきている。

 黒潮が潮岬に接近して流れると、伊勢湾側から低水温の海水が熊野灘沿岸に流れ込んでくる。しかし、大蛇行が発生すると、黒潮から分かれた流れがこの地域に流れ込んでしまうことから、一年を通じて海水温が比較的高い傾向が続いているという。

 この他にも、大蛇行による潮汐(ちょうせき)や潮流の変化など、いろいろな要因がヒジキの生育不良に影響していると考えられ、試験場の大野弘貴研究員(26)は「黒潮大蛇行が終わった上で海洋環境がどこまで戻ってくるかを注視する必要がある。ヒジキが十分成長できないために放卵する力も弱っており、漁業者と一緒に保全や増殖に取り組んでいきたい」と話している。

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