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舟だんじり半世紀ぶり復活へ みなべ町の鹿島神社

御舟倉に保管されている舟だんじり。今年の例大祭で半世紀ぶりの復活を目指す(和歌山県みなべ町埴田で)
御舟倉に保管されている舟だんじり。今年の例大祭で半世紀ぶりの復活を目指す(和歌山県みなべ町埴田で)
河内会による御舟謡の練習を見る鹿島神社の亀井隆行宮司(左から2人目)や葛城知則総代長(奥右)ら=和歌山県串本町古座で
河内会による御舟謡の練習を見る鹿島神社の亀井隆行宮司(左から2人目)や葛城知則総代長(奥右)ら=和歌山県串本町古座で
 和歌山県みなべ町埴田の鹿島神社は、今秋の例大祭で舟だんじりの半世紀ぶりの復活を目指している。田辺城主・安藤直次(1554~1635)が入城の際に用いたとされる軍船のだんじりで、祭りの見どころである渡御に加わる。神社総代らは「渡御をより華やかにしたい」と胸を躍らせる。


 鹿島神社は、沖合の鹿島に鎮座する鹿島大明神の遥拝所として祭られ、明治期に本社になった。鹿島大明神の基となる鹿島神宮(茨城県)は徳川家が崇拝する神社で、安藤氏も、入城の際の海路に用いた軍船のほか、陸路の行列に用いた剣やなぎなた、鉄砲などを鹿島大明神に奉納している。例大祭での「南道の奴行列」はその入城を模したといわれている。

 舟だんじりは、奉納された軍船の底中央部を加工してだんじりにしており、ほとんどが原形をとどめている。大きさは長さ約8メートル、幅約2メートル、高さ約3メートル。渡御に出なくなったのは半世紀前だが理由は分からないといい、境内にある御舟倉に保管され、車輪が壊れたままになっていた。

 総代らが「眠らせておくのはもったいない。祭りをもっと盛り上げるために復活させよう」と計画。2019年1月に氏子でもある千鹿浦地区(みなべ町山内)の船大工、濵田與一さん(73)に修復を依頼し、その夏に完了した。その後、京都の文化財修復師に依頼し新たに彩色も施した。

 20年の例大祭でお披露目する計画だったが、新型コロナウイルスの影響で渡御が2年続きで中止となったため、お披露目も先送りとなっている。今年も中止の可能性がある。

 渡御は、片町公園の御旅所から神社の第二鳥居まで約200メートルにわたって繰り広げる。舟だんじりを引く際、御舟歌が歌われていたが、その歌も途絶えている。

 歌は全部で12曲あるが、1曲目の「黄皇」を今年の渡御で復活させる計画。歌詞は残っているが、節回しが分からないことから、このほど、神社の総代や亀井隆行宮司(48)が、串本町古座地区の区民でつくる御舟謡の保存団体「河内会」を訪ね、練習を見せてもらった。御舟謡は、古座川を舞台にした河内祭のうち、国の重要無形民俗文化財に指定されている御舟行事で歌われる。「黄皇」と同じような曲もあり、その場で聴くだけでなく、御舟謡を歌うシーンを収録したDVDももらった。総代らは「まったく一緒というわけではないが、参考にして練習したい」と話す。

 舟だんじりは本来、埴田地区の氏子が引いていたが、復活に際し「次世代を担う子どもたちに地域の伝統文化を知ってもらおう」と、町外まで範囲を広げ、子どもと保護者に手伝ってもらう計画。近く募集し、練習もしてもらう。

 舟だんじりは祭りの際は、のぼりや幕で飾り、華やかにする。神社総代長の葛城知則さん(83)は「地元だけでなく、町外の子どもたちにも引いてもらいたい。祭りだけでなく、神社にも関心を持ってもらえればと思う」と話している。


 ■鹿島神社の例大祭 埴田、栄町、北道、片町、新町、芝崎、南道、東吉田、千鹿浦の9地区の氏子が参加して営まれる。近年は10月の第3日曜に営んでおり、今年は16日の予定。渡御は午後0時半からで、各地区のみこしや獅子舞、山車などが参加する。「南道の奴行列」と「芝崎のふとん太鼓」は3年に1度で、今年予定されている。

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