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紀州南高梅、平年比5割の不作 田辺・西牟婁(和歌山)で着果調査

南高梅の着果状況を調べる西牟婁地方果樹技術者協議会の調査員(和歌山県田辺市上秋津で)
南高梅の着果状況を調べる西牟婁地方果樹技術者協議会の調査員(和歌山県田辺市上秋津で)
 和歌山県やJA紀南などでつくる「西牟婁地方果樹技術者協議会」は、本年産の梅の着果調査の結果を発表した。着果数は主力品種の「南高」で平年比の5割ほどで、「南高」「古城」「小梅」のいずれも、前年や平年より「少ない」という結果だった。


 10日にJAや県などの職員が班に分かれ、田辺市、上富田町、白浜町、すさみ町にある128園(南高76、古城31、小梅18、雑梅3)で調査した。各園に設けた基準木の枝2本の実を数えて、1枝当たりの平均着果数を調べた。

 その結果、平均着果数は南高が前年の44%、平年の53%、「古城」が前年の42%、平年の57%、「小梅」が前年の44%、平年の48%だった。「着果はかなり少なく、大不作だった2020年の数値と似た状況だ」という。

 また、3月20日に降ったひょうの被害では、広範囲で果実に傷が見られた。協議会は「作柄は、今後の気象や生理落果などによって変わることがある」としている。5月中下旬にも、「南高」の着果数や肥大などを調査する予定。

■生産予想量も少なく

 JA紀南は、梅部会が11日にまとめた生産予想量として、南高1万4311トン(前年比70%、平年比67%)、古城243トン(前年比65%、平年比51%)、小梅471トン(前年比67%、平年比63%)を見込んでいると発表した。

■冬の高温影響か

 みなべ町も含め、紀南地方は今年、梅の実が少ない状況となっている。県うめ研究所(みなべ町東本庄)によると、冬の気温が高いと、不完全な花が多くなることが分かっている。今冬の平均気温は平年に比べて高かったため、開花前の高温が不作の要因の一つとして考えられるという。

 研究所が開花前の気温に着目したのは、20年産の梅が不作で、19年12月から20年2月の同研究所の平均気温を調べると平年と比べて1・9度高かったため。梅と同じバラ科のアンズやスモモ、サクランボでは、開花前の暖冬によってめしべがなくなるといった不完全花の研究例があり、梅も同じ状況になるのではないかと考えた。

 研究所の園地で20年12月ごろから21年2月ごろにかけて、露地でビニールで覆って人工的に「暖冬」状態にした木と、何もしない木とで花を調べると、ビニールで覆った木はめしべが短かったり、なかったりした。受粉樹のおしべの花粉も発芽しないなど機能が劣化していた。

 昨年12月から今年2月の研究所の平均気温は平年と比べて2・1度高く、不作だった20年産と同じような気温条件になっている。研究所の園地で調べると、南高梅の木の不完全花の割合は平年は5%未満だが、今年は約10%と平年の2倍くらいで、実際に実の量も少なくなっている。

 みなべ町内の園地を見たところ、沿岸部のある園地では、不完全花が2割近くあった。沿岸部より開花が遅い山間部のある園地でも8%くらいで、いずれも平年より多かったという。

 実際、農家からは「例年よく実がなる木も少ない状態で、着果が驚くほど少ない。その上3月のひょうの被害もあるので、選果作業も大変になりそうだ」という声も上がっている。

 西牟婁地方果樹技術者協議会の田ノ瀬佳男会長は「20年はかなり不作だったが、それに近いイメージ。今回も暖冬で不完全花が多い感じがした。おまけに広範囲でのひょう被害で傷が付いており、秀品率は下がる予想。生産者には残った実を丁寧に作ってほしいし、実の数は少ないが実の肥大に期待したい」と話している。

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