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南方熊楠賞に立命館大の北原氏 災害社会史の開拓者

北原糸子氏
北原糸子氏
 世界的な博物学者の南方熊楠(1867~1941)にちなみ、民俗学や博物学の優れた研究者を顕彰する第30回南方熊楠賞に、立命館大学歴史都市防災研究所客員研究員の北原糸子氏(80)=横浜市=が決まった。災害に直面した社会や人々がどう対応してきたかを追究する「災害社会史」という新たな研究領域を開拓したことが評価された。


 和歌山県田辺市と南方熊楠顕彰会が19日、発表した。

 選考委員会によると、北原氏は歴史学が専門。江戸末期の安政地震などを対象に、災害時の人間行動や、瓦版など情報メディアの社会史的な分析といった研究に先駆的に取り組んできた。

 災害史を歴史学だけのものとせず、理工学分野の研究者と共同して切り開こうとする姿勢が、災害研究分野における「文理融合」の起点の一つになったという。

 東日本大震災の被災地にも何度も足を運び、聞き取りなどの調査を続けている。赤坂憲雄・選考委員長は「在野の研究者であり、フィールドの人であった南方熊楠の姿を思い起こさずにはいられない」としている。

 北原氏は「私の仕事は災害社会史というささやかな範囲にとどまるものだったが、これまでやってきたことに多少とも意味があると評価していただいたのだと考え、納得できるまで研究を続けたい」とコメントした。

 南方熊楠賞は、熊楠の没後50周年記念事業として1991年度から表彰を始めた。例年、人文部門と自然科学部門から交互に選考している。北原氏の受賞は33人目。女性の受賞は第5回の鶴見和子氏以来、3人目。

■5月に授賞式

 授賞式は5月9日に同市新屋敷町の紀南文化会館で開く予定。


 北原糸子(きたはら・いとこ)氏 1939年、山梨県生まれ。71年に東京教育大学大学院文学研究科修士課程を修了。東京大学客員教授、神奈川大学特任教授、立命館大学歴史都市防災研究センター特別招聘(しょうへい)教授、国立歴史民俗博物館客員教授などを務めた。主な著書に「地震の社会史 安政大地震と民衆」などがある。

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