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2024年04月26日(金)

国登録有形文化財へ 旧上秋津小学校の校舎

都市と農村の交流施設として現在も活用されている旧上秋津小学校校舎(和歌山県田辺市上秋津)
都市と農村の交流施設として現在も活用されている旧上秋津小学校校舎(和歌山県田辺市上秋津)
昔の趣を残す校舎内
昔の趣を残す校舎内
 国の文化審議会は19日、和歌山県田辺市上秋津にある旧上秋津小学校校舎(現在は都市と農村の交流施設・秋津野ガルテン)の国登録有形文化財(建造物)への登録を、文部科学大臣に答申した。1953年建設の木造2階建て。校舎の役目を終えた現在も、人々が集う、地域づくりの拠点として活用されている。答申後、事務手続きを経て正式に登録される予定。


 旧上秋津小学校校舎は切妻造の瓦ぶきで、外観は下見板張り。内部は北側に廊下を通して南側に各室がある。校舎2階北側の中央付近から通路を突き出し、避難路を確保しているほか、鉄筋コンクリート製の境界壁や鉄扉を設けて防火面を強化。教室や廊下は方杖(ほうづえ)や筋交(すじかい)で構造を補強している。

 上秋津小学校は2006年に新築移転したが、地域では移転計画が持ち上がったのをきっかけに、地域の中心にある旧校舎について、地域資源として建物を壊さずに生かそうと、話し合いを重ねた。

 土地と校舎は公益社団法人上秋津愛郷会が購入。住民出資で運営会社の「農業法人秋津野」を立ち上げ、08年11月に秋津野ガルテンをオープンさせた。

 施設は、懐かしさを感じさせ、ぬくもりのある雰囲気。農家レストランやスイーツ工房、宿泊施設、ICTオフィスを備え、農業体験やスイーツづくりの受け入れなどをし、交流人口を増やす、地域づくりの拠点となっている。

 上秋津愛郷会の中山稔代表理事は「これからも地域の財産として大切に保全していきたい」、秋津野の木村則夫社長は「今現在も使われていることに価値があり、そのことが保全にもつながると思う。校舎の雰囲気を壊さないよう保っていきたい」と話している。

 今回、県内ではこのほか、「紀伊風土記の丘松下記念資料館」(和歌山市)も国の登録有形文化財への登録が答申された。特別史跡岩橋千塚古墳群とその周辺環境を保全管理するため1971年、松下幸之助の寄付で竣工した博物館施設。

 今回の2件の登録で、県内の国登録有形文化財(建造物)の数は111カ所、303件になる。