和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年05月01日(水)

安倍氏国葬に賛否 「実績もっと評価」「法的根拠ない」

 政府が9月27日に予定する安倍晋三元首相の「国葬」について、和歌山県紀南地方でも賛否が分かれている。安倍氏の実績を評価する声がある一方、国会で取り沙汰された疑惑や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係、約2億5千万円の国費を投入する点にも疑問の声が上がっている。


 田辺市文里2丁目の自営業男性(68)は「外交や経済政策など政治家としての実績をもっと評価すべきだ。海外では評判がいいのに、日本ではマスコミの偏向報道でイメージが悪化している。凶弾に倒れた元首相を国民で弔うのは自然なこと」と主張する。

 安倍氏を悼む声は世代を問わずある。田辺市湊の会社員女性(23)は「銃撃現場に多くの人が献花していた。どれだけすごい人物だったかが伝わる。国葬は問題ないと思う」と話した。

 上富田町の公務員男性(36)は「国葬を海外からの要人との外交の場にすればいい」と「弔問外交」に期待する。「ただ、税金でやる限り経費はできるだけ抑える工夫をするべきだ」と注文も付けた。

 時間の経過とともに揺らぐ人もいる。田辺市本宮町の自営業男性(63)は「外交面の功績が光っており、国葬に違和感はなかったが、旧統一教会との深い関係が明らかになってきた。『国葬にふさわしいだろうか』という思いが浮かんできている」と明かす。

 全く評価できないという意見もある。田辺市上秋津の主婦(45)は「安倍氏は解釈改憲や森友・加計問題など、権力を自分に近い人のためほしいままにしていた印象」と言い、「国葬には反対。法的根拠もあいまいで、国会審議も通していない」と疑問を突き付ける。

 田辺市龍神村の無職男性(66)も「費用は全て税金なのに閣議決定だけで進めるやり方は、国民をないがしろにしている。政界と旧統一教会との関係も明らかになってきた中、根本的なところを見直した方がよい」と反対する。

 田辺市天神崎の団体役員男性(70)は「『国葬した』というだけで『それだけすごい人だったんだ』と評価されてしまう。憲法をないがしろにし、うそがまかり通る国会にしたという、首相としてやったこともきっちりと踏まえて考えるべきだ」と憤る。

 田辺市中辺路町の自営業男性(67)は「人物の評価はどうしても分かれる。国葬の明確な基準を設けるのは難しく、誰であれ必要ない。どうしても行いたいなら、内閣と自民党の合同葬にすればいい」と話した。

 国葬当日、弔意を表明する半旗掲揚などの対応について、県や紀南の自治体は「現時点では国から通知が届いておらず決まっていない」などとしている。国葬への出席についても現時点で通知は来ていないが、仁坂吉伸知事は31日の会見で「案内が来れば行きたい」との考えを示した。

 政府は地方自治体や教育委員会などに弔意表明の協力を求めない方針を示している。