和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月12日(土)

ドングリ拾って森守ろう 田辺市の林業会社が回収箱

熊野の森を保全するプロジェクトで使用するドングリ回収ボックス(和歌山県田辺市秋津川で)
熊野の森を保全するプロジェクトで使用するドングリ回収ボックス(和歌山県田辺市秋津川で)
 林業ベンチャー「ソマノベース」(和歌山県田辺市文里2丁目)が、ドングリを拾って熊野の森を保全するプロジェクトを立ち上げた。地域住民や企業、観光客が集めたドングリを育て、植林する。田辺市内の事業者と協力して、熊野古道沿いなど3カ所にドングリ回収ボックスを設置。まち全体で未来の森をつくる。

 異常気象や相次ぐ災害で、環境問題に関心が高まる中、森林の役割が注目されている。ソマノベースは「土砂災害による人的被害をゼロにする」のビジョンを掲げている。木を伐採した後の「植林(再造林)」は、土砂災害を防ぐ解決策の一つになるという。

 プロジェクト「三度(たびたび)」は、ドングリ拾いをきっかけに、森林に興味を持ってもらい、「自分事」として保全に関わってもらうのが狙い。森づくりを通じ、地域や世代を超えた交流が生まれることも期待している。

 田辺市の事業者と大手企業の若手社員が交流することで、人材育成を図る事業「ことこらぼ」から生まれた企画。プロジェクト名には「森の環境に魅了された人が、たびたび熊野に足を運ぶようになってほしい」といった思いを込めた。

 仕組みはシンプルで、熊野の森や古道を散策したり、観光したりしながら拾ったドングリを回収ボックスに入れてもらう。ソマノベースがドングリを選別し、苗木に育てて熊野地域で植林する。

 回収ボックスは縦35センチ、横25センチ、奥行き18センチ。ケヤキ、スギ、ヒノキ、クリ、タモ、ブナの6種類の市内産木材を組み合わせて作っている。

 設置しているのは、「古道歩きの里 ちかつゆ」(田辺市中辺路町近露)▽「道の駅 紀州備長炭記念公園」(秋津川)▽「とがのき茶屋」(中辺路町野中)。他にも設置を申し出る施設があり、さらに増えそうだという。設置期間は来年1月31日までの予定。

 ソマノベースの奥川季花社長は「誰もが参加できるプロジェクト。楽しみながら拾ったドングリが山に帰って、森林になる。そんな循環をつくりたい。それが土砂災害防止にもつながる」と呼びかけている。