和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月10日(木)

地域の食材で菓子 古座川町に移住の夫妻、空き家改修し加工販売

地域の食材を生かし菓子などに加工して販売する店を始めた久保拓也さん(右)と聡子さん夫妻=和歌山県古座川町月野瀬で
地域の食材を生かし菓子などに加工して販売する店を始めた久保拓也さん(右)と聡子さん夫妻=和歌山県古座川町月野瀬で
県道沿いの空き家を加工場併設の飲食店に改修した
県道沿いの空き家を加工場併設の飲食店に改修した
 2年前に東京都から和歌山県古座川町に移り住んだ久保拓也さん(45)と聡子さん(48)夫妻が今年から、地域の食材を菓子などに加工して販売する店を同町月野瀬で開いている。「地産地消の拠点に」との思いで、空き家を改修してオープン。2人は「農家さんと一緒に地域を盛り上げていければ」と意気込んでいる。


 夫妻は2人の名前から名付けた「さとたく」として、今年1月下旬、加工場を併設した飲食店を開設。地元のかんきつやヨモギなどを使ったシフォンケーキ、シカ肉のジビエパイ、サンドイッチなどを販売している。

 2人は2021年6月、拓也さんが町地域おこし協力隊として着任したことに合わせ移住してきた。

 拓也さんは生活雑貨などを展開する会社で働いていたが、両親が紀北出身という縁もあり、いずれは和歌山で暮らしたいと、夫妻は以前から移住を検討。そんな中、コロナ禍の影響で農産物が廃棄されたり、安値で買いたたかれたりしているというニュースがきっかけで、困っている生産者の食材をインターネットを通じて買うようになり「生産地で消費すれば、農家さんも安心して作り続けられるのではないか」という思いを抱きながら、将来の起業を目標に同町に移り住んだという。

 移住後は、拓也さんが同町池野山の道の駅「虫喰(むしくい)岩」に事務所がある町観光協会で働く一方、栄養士や調理師の資格を持つ聡子さんは地域の農家らと交流をしながら、早速、道の駅などで地元食材を使って試験的に製造したシフォンケーキなどの販売を始めた。イベントでの出張販売にも取り組み、固定客も生まれてきたという。

 そうした中で「地産地消のための加工場を設立し、地元産物に付加価値を加えて販売したい」と、公益財団法人「わかやま産業振興財団」が募集していた「わかやま地域課題解決型起業支援補助金」に応募し、採択された。インターネットで資金を募るクラウドファンディングも活用しながら、拠点にするために購入した県道沿いの空き家の改修を昨年9月から始めた。物づくりが得意という拓也さんも昨年10月末で地域おこし協力隊を辞め、自分で床板を張るなどして開店に向けた準備を進めていた。

 聡子さんは「自分たちで食べるしかないというようなものも適正価格で買い取って、新しいものをつくりたい。農家さんと一緒に長く続けていける場所になれば」。拓也さんも「まずは地元の方向けに充実させ、ゆくゆくは外から来た人も滞在してもらえるような施設にしていきたい」と意気込んでいる。

 営業は基本的に土日曜と祝日の午前11時~午後4時だが、ゴールデンウイーク期間中は3、4、5、6日に営業する予定。問い合わせは、さとたく(0735・67・7998)へ。