和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月05日(土)

老舗語り部団体が若返り 41歳新会長、古道踏破から熊野に魅せられ

「語り部の会熊野古道中辺路」の会長職を80歳の安江樹郎さん(左)から引き継いだ41歳の山田良憲さん=和歌山県田辺市中辺路町で
「語り部の会熊野古道中辺路」の会長職を80歳の安江樹郎さん(左)から引き継いだ41歳の山田良憲さん=和歌山県田辺市中辺路町で
熊野古道・中辺路のシンボル「牛馬童子」(和歌山県田辺市)
熊野古道・中辺路のシンボル「牛馬童子」(和歌山県田辺市)
古道は滝尻王子から険しい山道に分け入る(和歌山県田辺市)
古道は滝尻王子から険しい山道に分け入る(和歌山県田辺市)
田辺市中辺路町高原の朝霧(和歌山県田辺市)
田辺市中辺路町高原の朝霧(和歌山県田辺市)
 和歌山県田辺市を拠点に活動している世界遺産・熊野古道の語り部団体「語り部の会熊野古道中辺路」の新しい会長に、今春から山田良憲さん(41)=田辺市本宮町大居=が就任した。同会は熊野古道の語り部の先駆け的な団体。語り部は高齢化やそれに伴う人数の減少傾向が課題になっており、前会長で顧問となった安江樹郎さん(80)=同市新庄町=は「若い人をどんどん巻き込んで活性化させてほしい」と期待している。


 語り部の会熊野古道中辺路は、1978年に熊野古道研究会として始まり、南紀熊野体験博(99年)をきっかけに語り部としての活動を始めた団体「漂探(ひょうたん)古道」が前身だ。

 2005年にはNPOとなり、多い時には年間3万人余りの観光客を案内。17年に組織を改変し、現在の名称になって活動を続けてきた。今は20~80代の16人が語り部として登録している。

■関東出身の山田さん 古道踏破きっかけに

 山田さんは東京都出身で、埼玉県育ち。大学時代からは京都府で過ごし、哲学を学ぶ中で四国遍路やサンティアゴ巡礼道(フランス―スペイン)を踏破した。

 社会人になって私立高校で教壇に立っていた19年、後に妻となる田辺市出身のこのみさん(38)が京都市から田辺市本宮町の熊野本宮大社までの熊野古道約360キロを3週間かけてたどる「平成最後の熊野詣で」という旅を計画していることを知り、仕事を辞めて同行。その後、二人で熊野古道小辺路やサンティアゴ巡礼道、大辺路などを踏破し、翌年4月に結婚した。

 山田さんは20年1月から、語り部の会熊野古道中辺路に所属。語り部として活動をするほか、IT化への対応やコロナ禍の影響などで経営改善が求められていた事務局を22年4月から引き受けて改革に取り組んでおり、4月18日に開かれた総会で新しい会長に選ばれた。

 安江さんは「次世代を担うリーダーが来てくれてラッキーだった。外国からも注目される熊野古道を楽しんでいただくには、語り部の存在は絶対に必要。語り部団体が若返りながらこれからも続いていく一つのモデルケースになってほしい」と話す。

 山田会長は「来年迎える世界遺産登録20周年を前に、熊野古道研究会から始まった熊野古道が好きな人たちが集まる団体という原点に改めて立ち返りたい。語り部さんそれぞれが働きやすい環境をつくり、バックアップしていきたい」と意気込んでいる。