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2024年04月29日(月)

新たな森林管理構築へ 田辺市、聞き取りや情報収集

新しい森林経営管理制度
新しい森林経営管理制度
 田辺市は、手入れが行き届いていない民有の森林を市町村が集約して管理する国の「森林経営管理制度」に乗り出した。事業立案に向けて関係者の聞き取り調査をしているほか、今月末には森林所有者の情報収集を始める。


 4月に施行された森林経営管理法に基づく制度。林業の衰退や所有者の世代交代で、適切な手入れがされない事態に対応するのが狙い。

 制度では、市町村が森林の所有者から経営管理を委託された後、経営に適した森林は意欲のある林業経営者に再委託し、適さない森林は直接管理する。直接管理の場合は国から配分される新設の「森林環境譲与税」を活用し、間伐や植林を進める。市には管理できる人材がいないため、役割を委託することになる。

 市は事業立案に向け、林業振興や山村振興、持続可能な地域づくりなど5分野の関係者、各約100人から聞き取りを始めた。来年度に第三者の委員会を立ち上げ、事業案を調査・研究してもらおうと考えている。

 これまでの聞き取りでは人口減少が進む中、森林管理の担い手確保を課題に挙げる人が多いという。また「市民が森林の現状を知らない」「現場を体験する取り組みが必要」などの声が出ている。

 森林所有者に今後の管理について考えを聞くため、意向調査も進める。ただ、すでに調査を始めた自治体では回答率が2~3割程度で、自分が所有する森林の場所が分からない人も多いという。

 そこで市は意向調査の前に、森林組合などから聞き取りをして所有者の情報を精査。その上で、地籍調査が終了している地域から計画的に調査する。調査を基に、市は所有者から経営管理権を受託するかを判断する。


 【森林環境譲与税】森林整備を目的に国税の「森林環境税」とともに創設された。2024年度から本格実施され個人から年千円を徴収。一度国に集まった税金が、森林環境譲与税として市町村や都道府県に配分される。

 森林整備や人材育成、担い手の確保、木材利用の促進、普及啓発に充て、使途は公表しなければならない。

 田辺市への配分額は19年度が約1億円。22年度には1億5千万円、29年度には3億円、19~33年度の合計は31億8千万円の見通し。