和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月12日(木)

手話で心温まるおもてなしを 県が観光関係者に講座、和歌山

講師(右)を客に見立て、接客場面を想定した手話の練習に臨む受講生=和歌山県田辺市朝日ケ丘で
講師(右)を客に見立て、接客場面を想定した手話の練習に臨む受講生=和歌山県田辺市朝日ケ丘で
 和歌山県は、宿泊施設など観光関連事業所の従業員を対象に手話講座を開いている。今夏に県を訪れた観光客数は、コロナ禍前の2019年夏を上回った。来年6月には「全国ろうあ者大会」が県内で開催される。「手話で心温まるおもてなしを」と呼びかけている。

 右手の親指と人差し指の指先をくっつけてつまんだ形にして、左側の首の下から右へと移動する。「ツキノワグマの胸の模様を表しています。熊野古道の熊です」―。

 観光関係者向けの手話講座が今月、田辺市朝日ケ丘の西牟婁総合庁舎であった。宿泊施設や飲食店の従業員、熊野古道の語り部ら5人が参加。実際の接客場面を想定したロールプレイで、手話を学んだ。

 講師で田辺市聴覚障害者協議会「ろう者手話講師団」の末本浩信さんが客役を務め、ホテルで朝食の時間を確認したり、飲食店でお薦めメニューを尋ねたりした。受講生は習ったばかりの手話と観光パンフレットなどの資料を使って対応した。

 白浜町のホテルに勤務する女性は「筆談のお客さまもいる。あいさつだけでも手話でできれば、もっと安心してもらえる。スタッフにも広めたい」、田辺市中辺路町で語り部活動をする女性も「ツアー客のろうあ者に、昔少し覚えた手話であいさつしたら、とても喜んでくれた。もっと古道の魅力を伝えられるようにしたい」と話した。

 17年12月に県手話言語条例が制定され、県は誰もが手話に親しむ共生社会実現に向け、行政職員や一般を対象に手話講座を開いている。「出張!県政おはなし講座」として、事業所の要望に合わせた「手話教室」も開いている。