和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月05日(土)

「ドクウツボ」本州初確認 最南端の和歌山県串本で、海中公園センターで展示

本州で初めて見つかったドクウツボ。水槽で飼育されている(和歌山県串本町有田で)
本州で初めて見つかったドクウツボ。水槽で飼育されている(和歌山県串本町有田で)
 和歌山県串本町須江崎沖で昨年11月に地元漁師が捕獲したウツボが、本州初記録となるドクウツボ(ウツボ科)であることが、同町有田の串本海中公園センター水族館の飼育員、大西遼さんと鹿児島大学大学院の是枝伶旺さんの調べで分かった。卵や仔魚(しぎょ)の段階で黒潮によって南方域から運ばれたとみている。


 ドクウツボはサンゴ礁域に生息する大型のウツボで、全長約2メートルになる。インドから太平洋の熱帯、亜熱帯域に広く生息している。国内では小笠原諸島や薩摩半島、大隅諸島、琉球列島で記録されているが、鹿児島県より北では記録がなく、分布の北限記録を大きく更新した。

 串本町では2014年、ドクウツボとみられるウツボを捉えた水中写真を町内のダイバーが撮影しているが、その後目撃されていない。大西さんと是枝さんは先ごろ、今回の捕獲について連名で鹿児島県自然環境保全協会の会誌「Nature of Kagoshima」に発表した。

 大西さんは「気候変動でこの辺りでも普通に見られる種類になってくるのでは。まだ記録のない魚が山ほどいると思う。今後も調査、研究を続けたい」と話している。

 捕獲されたドクウツボは全長約90センチで、若い個体とみられる。同水族館でイカや魚の切り身を与えながら飼育展示している。

 大西さんは「一般的に標本にすることが多く、生きたまま論文になる例は少ない。ぜひ見に来てほしい」と呼びかけている。