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2024年05月19日(日)

中辺路舞台にエンタメ小説 榎本さんが「マネーの魔術師」

榎本憲男さん「マネーの魔術師・ハッカー黒木の告白」
榎本憲男さん「マネーの魔術師・ハッカー黒木の告白」
 和歌山県白浜町出身の作家、榎本憲男さん(東京都在住)が、新作「マネーの魔術師・ハッカー黒木の告白」(中公文庫)を発刊した。田辺市中辺路町を主な舞台に、金融資本主義の問題や伝統工芸の存続などを題材にしたエンターテインメント小説となっている。

 米中央情報局(CIA)にも雇用されたことのあるハッカーの黒木が、中辺路町で伝統工芸を研究する大学院生に出会い、伝統工芸を存続させるための試みに誘う―。リーマンショックやコロナ禍、東京五輪、「紀州のドン・ファン事件」など現実世界も背景に物語は展開する。

 榎本さんは地域活性化の一助になればと地元を舞台に選んだ。随所に「おかいさん」「もじける」など方言が飛び交い、熊野の歴史をひもとく場面がある一方、国際金融市場のメカニズムなどグローバルな要素も盛り込んでいる。

 榎本さんは東京テアトルで映画事業に携わり、劇場支配人やプロデューサーなどを務めた。退社後、2011年に「見えないほどの遠くの空を」で映画監督デビュー。小説の執筆も始め、16年発刊の「エアー2.0」(小学館)は、ハードボイルド・冒険小説を対象とする大藪春彦賞候補となった。新作に登場する黒木は、代表作「巡査長 真行寺弘道」(中公文庫)にも登場している。