和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年05月03日(金)

福祉事業所がサカキ生産 白浜の夫妻から引き継ぐ、祇園祭でも使用

サカキを束にする坂本英信さん、ひろみさん夫妻(右の2人)や「ハピラブ」利用者ら=和歌山県白浜町市鹿野で
サカキを束にする坂本英信さん、ひろみさん夫妻(右の2人)や「ハピラブ」利用者ら=和歌山県白浜町市鹿野で
 和歌山県白浜町の旧市鹿野小学校を拠点にする就労支援B型事業所「ハピラブ」は、地域で暮らす夫妻が営んでいたサカキを採取・出荷する事業を引き継いだ。取引先との関係を保ちつつ、新たな販路も開拓。利用者の収入増にもつなげている。


 夫妻は坂本英信さん(54)、ひろみさん(57)。昨年1月に英信さんが病に倒れて高次脳機能障害と診断され、介護支援専門員からハピラブを紹介された。

 7月に施設見学で訪れた際、サカキの仕事について相談。事業所を運営する一般社団法人「み・ゆーじ」(大阪府東大阪市)代表理事の末永将大さん(34)が「一緒にやりましょう」と応じた。英信さんは事業所の利用者として、ひろみさんはハピラブの従業員として携わることになった。

 ひろみさんは「父の代には地域の皆さんと一緒にやっていたが、高齢化もあって縮小し、近年は細々と、という感じだった。続けられるように声をかけてもらえてうれしかった」と振り返る。

 ハピラブの利用者らは、自生するサカキを採取し、葉の汚れを落としたり長さをそろえたりして、おおむね10本前後の束を2種類(40センチと38センチ)生産している。ひろみさんによると、当初は作業に苦戦する様子も見られたが、今ではスムーズにこなしている。それぞれの特性に合わせた作業を割り振っているという。

■京都の祇園祭で使用

 坂本さん夫妻は、愛知県の生花市場や大阪府の問屋などへサカキを出荷していた。その一部は京都の祇園祭でも使われている。祭りの関係者は「高品質で、替えのきかない存在」と話す。

 ハピラブでは、これら坂本さん夫妻が開拓してきた取引先だけでなく、今年5月からは、東海地方を中心にスーパーマーケットなどを展開する岐阜県の企業への出荷も始めた。

 末永さんによると、サカキの採取場所は所有者から許可を得ている山林で計約7ヘクタールある。「坂本さんの軌跡を引き継ぎつつ、新しいことにも取り組みたい」と意気込んでいる。生産量を増やしたり、束にする過程で切り落とす葉を使った外国人向け商品を開発したりしようと考えている。

 ハピラブは一般にもサカキを販売している。ゴムでくくった束は200円、それより少し大きい、ひもでくくった束は300円(いずれも税込み)。一般の従業員も募っている。問い合わせはハピラブ(0739・33・2184)へ。

 サカキは、神事で用いられたり、神棚に供えたりする種として知られる。和歌山の生産量は都道府県別で最も多い(ヒサカキを含めた統計)。葉の大きさや形、つや、日持ちのよさなどが優れているという。