和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年05月18日(土)

黒田清輝、佐伯祐三の作品も

黒田清輝「裸婦」(1903年、個人蔵)
黒田清輝「裸婦」(1903年、個人蔵)
佐伯祐三「リュ・デュ・シャトーの歩道」(1925年、県立近代美術館蔵)
佐伯祐三「リュ・デュ・シャトーの歩道」(1925年、県立近代美術館蔵)
青山熊治「雪の馬」(1927年、個人蔵)
青山熊治「雪の馬」(1927年、個人蔵)
 和歌山市吹上1丁目の県立近代美術館は12月24日まで、小企画展「原勝四郎と同時代の画家たち」を開いている。開催中の特別展「原勝四郎展 南海の光を描く」に合わせ、同館の洋画コレクションを中心に、田辺市栄町出身の洋画家・原勝四郎(1886~1964)と同時代に活躍した画家たちの作品を紹介している。観覧は無料。

 原勝四郎は県立田辺中学校を卒業後、1905~06年と09~16年の2度、画家を志して上京した後、17年末から21年4月までフランスに赴いた。帰国後は故郷の田辺へ戻り、31年からは、現在の白浜町に移住して絵を描き続けた。

 原が東京に居た期間は、ヨーロッパ留学から帰国した若い美術家を中心に、新しい美術表現が次々に紹介されていた時期。今回の展示では、東京美術学校西洋画科の教授であり、原も通った白馬会葵橋洋画研究所の設立者である黒田清輝をはじめ、原と同世代の画家たちの作品を通して、明治時代末から大正時代にかけての東京の美術動向を紹介している。

 原がフランスに赴いたのは、ちょうど第1次世界大戦のさなかだったこともあり、原自身の絵画学習には困難が伴った。原がフランス滞在中に交流した青山熊治や長谷川潔ら、同時期にフランスへ留学していた日本人画家たちの作品も展示している。

 帰国後の原は、田辺と白浜を拠点に画壇とは距離を取って制作を続けたが、年に1回、戦前は二科展、戦後は二紀展への出品を自らに課した。それが唯一と言っていい中央での作品発表の機会だった。原を経済的に支援した大阪の実業家、山本發次郎が収集の対象とした佐伯祐三や戦後、二紀会への参加を促し、親しく交流した鍋井克之、戦前から親交のあった熊谷守一らの作品を通して、1920年代から戦後にかけての絵画を紹介している。

 展示作品は、黒田清輝「裸婦」(1903年、個人蔵)、佐伯祐三「リュ・デュ・シャトーの歩道」(25年、県立近代美術館蔵)、青山熊治「雪の馬」(27年、個人蔵)、高村光太郎「佐藤春夫像」(14年、個人蔵)など。

 特別展「原勝四郎展 南海の光を描く」は田辺市立美術館(田辺市たきない町)と共催で、12月3日まで開いている。観覧料は一般800円、大学生500円、高校生以下と65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料。

 開館時間は午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。