和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月12日(木)

「ニュースのキー」ロケットの役割は?

ロケット発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げられる「カイロス」のイメージ図
ロケット発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げられる「カイロス」のイメージ図
 和歌山県串本町田原の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」からの初号機打ち上げが、9日に迫っています。でも、何のために打ち上げるかはご存じですか? 発射場を運営する「スペースワン」(東京都)の会見などからロケットの役割や宇宙産業の現状を調べました。

 「スペースポート紀伊」から打ち上げるロケット「カイロス」は、小型の人工衛星を運びます。スペースワンは「宇宙宅配便」を目指すと説明しています。

 小型の衛星は通信や気象分野で活用が進んでいます。能登半島地震では従来の通信インフラが復旧しない中、衛星による通信が注目されました。小型衛星の市場は爆発的に成長すると見込まれています。

 内閣府宇宙開発戦略推進事務局によると、2022年に世界で軌道上に打ち上げられた人工衛星の機数は、過去最多の2368機。10年間で約11倍に増えています。今後さらに増加する見込みです。

 一方で、打ち上げに利用可能なロケットは世界的に不足しています。小型衛星の大半は大型ロケットへの相乗りで打ち上げられており、好きな時に飛ばせない状況が続いているそうです。

 先月打ち上げに成功した日本の新たな主力ロケット「H3」は全長約63メートル、重さ約575トンと大型です。対して「カイロス」は全長約18メートル、重さ約23トンと小型。3段式で、固体燃料で飛びます。

 燃料を満たした状態で保管できる固体燃料ロケットは短期間で打ち上げができるのが特徴です。構造がシンプルで、部品点数が少ないためコストも抑えられます。

 その利点が「宇宙宅配便」に生きます。今回運ぶのは政府の人工衛星。スペースワンではすでに3号機までの受注が決まっています。2020年代に年間20機、30年代には30機の打ち上げが目標。23年の日本のロケット打ち上げ成功回数は2回だったので、飛躍的に増えることになります。

 今回の人工衛星打ち上げが成功すれば、民間の宇宙ベンチャー企業としては国内初。小型ロケットを開発する企業は世界に100社近くあると言われています。串本町を拠点に世界との競争が始まっています。