和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年12月19日(金)

ウミガメ赤ちゃん続々誕生 水槽デビューでスイスイ、和歌山・串本海中公園

ふ化したばかりのウミガメの赤ちゃん(いずれも和歌山県串本町有田で)
ふ化したばかりのウミガメの赤ちゃん(いずれも和歌山県串本町有田で)
飼育員が見ていない深夜にふ化した赤ちゃんカメが明かりで集まるように設計した装置
飼育員が見ていない深夜にふ化した赤ちゃんカメが明かりで集まるように設計した装置
ウミガメの赤ちゃんが砂からはい上がってきた場所を指さす吉田徹副館長
ウミガメの赤ちゃんが砂からはい上がってきた場所を指さす吉田徹副館長
 和歌山県串本町有田の串本海中公園センター水族館でウミガメの赤ちゃんが続々と生まれている。19日から特別水槽で展示が始まった。小さな身体でスイスイと元気に泳ぎ回る姿が見られる。

 砂を敷き詰めた人工産卵場で8日にアカウミガメ、11日にアオウミガメがそれぞれ10匹生まれたのを皮切りに、19日までに計257匹が生まれた。今年は産卵を計13回確認しており、9月下旬までのシーズン中に通算300~400匹が生まれる見込み。

 ウミガメの赤ちゃんはアカウミガメが甲長4・5センチ、重さ20グラム。アオウミガメが甲長5センチ、重さ30グラム。10年ほどで甲長1メートル弱、重さ100キロを超える「大人」に成長するという。

 飼育担当の吉田徹副館長(43)は「赤ちゃんには、卵の殻を破って出てくるために使う『卵角』と呼ばれる角のような突起が目と鼻の間にある。腹側を見るとおへそも見える。今だけの特徴で、観察を楽しんでもらいたい」と話している。

 来館者が赤ちゃんカメをタッチできるようになるのは11月ごろの予定。展示は28匹で、残りはバックヤードで飼育している。予約制のバックヤードツアーでは赤ちゃんに触れることができ、飼育体験では餌やりもできる。

■飼育下でのふ化30年


 同水族館は絶滅の恐れがあるアカウミガメの飼育技術に定評がある。人工産卵場を設置したのが1986年。初めて飼育下でふ化に成功したのが95年で、今年30周年を迎える。

 毎年300~400匹以上が生まれ、その大半は資源保護と研究のため放流している。今年生まれた赤ちゃんも選抜した数十匹を水族館で飼育する以外は、全て10月以降に船で沖合に放流する。飼育下の子ガメもほとんどは1~2年成長させた後、標識を付けて放流する。過去の研究で太平洋を回遊して日本に戻ってくることが分かっている。

 最初に捕獲してきた野生のウミガメを「親世代」とすると、人工産卵場で生まれ、水族館で育った「子ども世代」、さらにその子どもの「孫世代」がいる。今年生まれている赤ちゃんには「ひ孫世代」もいる。


次のニュースを読む