和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年12月19日(金)

都市×地方で課題解決 「関係人口」を深めよう、和歌山県田辺市が新講座

ミカンの収穫を体験する「タナビーズ」の受講者ら(和歌山県田辺市内で)
ミカンの収穫を体験する「タナビーズ」の受講者ら(和歌山県田辺市内で)
 和歌山県田辺市は、新たな関係人口講座「タナビーズ」を開講した。都市部を中心とした地域外の人たちと、市内の事業者らがチームを組んで、さまざまな地域課題の解決に挑む。単なる関係人口づくりだけではなく、より深く、持続的なつながりを生み出す場にしたいという。

 関係人口は「観光以上、定住未満」で、地域と継続的に関わりを持つ人々のこと。人口減少が進む地方の自治体にとって、地域活動の担い手や将来的な定住人口になり得る存在として期待されている。

 市は2018年度以降、関係人口づくりを目的とした講座を開講。首都圏在住者に市の魅力を知ってもらう「たなコトアカデミー」、低山トラベラーが集う「熊野リボーンプロジェクト」などがあり、歴代受講者は計200人を超える。

 新たに開講したタナビーズは、より実践的なプログラムを目指す。受講者は東京都や大阪府などから集まった11人。会社員やデザイナー、大学生など職業はさまざまで、20~50代と年齢層も幅広い。

 市の人材育成事業「たなべ未来創造塾」を修了した市内事業者らが立ち上げた四つのプロジェクトに、1~4人に分かれて参加。「かんきつや梅を使った新商品を開発したい」「子どもや高齢者が立ち寄れる居場所をつくりたい」―といった課題の解決策を、共に考える。

 第1回講座がこのほど市内であり、プロジェクトごとにフィールドワークを実施した。農園でミカンの収穫や選果を体験したり、通学路を歩いて町並みを観察したりして、現状や課題を共有した。

 講座は計5回で、来年2月に最終発表をする予定。市たなべ営業室の担当者は「都市と地域が対等なパートナーとして学び合う関係性を大切にしたい。副業や兼業なども視野に入れ、継続的に田辺市と関わってくれる人材を育てていきたい」と話している。

■「『楽しい』が大切」
関係人口提唱・高橋さん


 タナビーズの第1回講座では、産直アプリの運営などを手がける「雨風太陽」(本店・岩手県)社長で、「関係人口」の提唱者でもある高橋博之さんが講演した。「都市と地方をかきまぜる」をテーマに、関係人口の重要性について語った。

 講演は一般にも公開され、約70人が耳を傾けた。

 高橋さんは、人口減少を前提に、どう楽しく生きていくかが大切だと強調。関係人口の事例を紹介しながら「都市の人々が豊かさと引き換えに失い、なおかつ地方に残っているものが『人間性』」「地域と関わって喜ばれることが、生きがいややりがいにつながっている」と話した。

 関係人口を増やすため、政府が創設を検討する「ふるさと住民登録制度」についても言及。ふるさと納税制度は返礼品競争になったが、ふるさと住民登録制度は楽しさを競い合うべきだと語った。


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